2歳ともなると自由に歩き回れるようになるし、要求を言葉で表現できるようになる。自我も強くなるし、いわゆる「イヤイヤ期」「魔のニ歳児」と言われる時期となる。娘がまさにそのさなかだ。
日中、私が仕事に出ている間の娘の様子を妻に聞いた。
妻が家事をしていると、一人で遊んでいた娘が壁際のソファーの背もたれ部分に登って、立ち上がろうとしていたらしい。慌てて妻が「危ないよ」と注意するとすぐさま「危なくないよ」と言い返してくる。
「危ないよ!」「危なくないよ!」「危ないよ!!」「危なくないよ!!」とさんざん繰り返したあと、聞こえるか聞こえないかくらいの声でこっそりと「危なくないよ」と横を向いて呟いた。黙らされるのは嫌だけど、これ以上言われたくもないという葛藤の末に、聞こえないように言ってやろうという判断なのか。しかし、それを許す妻ではない。
「聞こえてるよ! 危ないの!」ついに追い詰められた娘。どうしようもなくなり、突然「スゥポォォォンジィィィボォォォブゥゥゥ!」と全く関係ないことを力いっぱい叫ぶ。本人はそれで話をそらしたつもりなのだろう。負けず嫌いすぎる。
ただ、自分が悪いことをしていると自覚しているときは言い返してこないようだ。
娘がテーブルの影に隠れてなにかゴソゴソしていたので覗きこんでみると、長子のメガネをいじっているところだった。普段から「眼鏡は壊れるから触ったらダメだよ」と、言い含めているので、見付かったら怒られると思って、隠れて触っていたのだろう。眼鏡のツルを目一杯広げていたので「おにいのメガネを触ったらダメっていつも言ってるでしょ!」と叱ると、慌てて眼鏡を放り出し、顔を隠すように床に突っ伏して泣き出した。
あまりに大泣きするので、抱っこしてみるも、全く泣き止まない。最終的に「いつも言ってるでしょ。壊れたらおにいが困るからダメなんだよ」と頭をなでながら慰めることになる。
ただ、顔を見せないようにして、泣き声をあげるばかりなので、本当に泣いているのかどうかはあやしかった。もしかしたら、悪いことをしている自覚があるなしに関わらず「こいつは泣いたら許してくれるちょろいやつだ」と思われていて、嘘泣きをしているだけかも知れない。